1Nikkor 32mm f1.2

1nikkor 32mm f1.2
Nikon 1 J4, 1NIKKOR 32mm f1.2

世の中にはいろんなレンズが出回っているけれど、その中で異彩を放つレンズは少ないながらも存在していて、この1インチセンサーに特化したNikon 1 NIKKOR 32mm f/1.2も一風変わったレンズ。フルサイズ換算で86mm F3.3程度のレンズながら、高い精度を要求する小さなセンサーの実力とレスポンスを十分に引き出すため、1インチ用としては重く、大きい。

1nikkor 32mm f1.2

最近のレンズで多用されており小型化に非常に有効な非球面レンズを一切使っていないところに、このレンズの設計思想が見て取れる。以前からNikonは、85mm F1.4、F1.8クラスのレンズに非球面レンズは使用していないのは、美しいボケに影響が出るということを理解しているからだと思う。一般的に玉ねぎボケはや二線ボケなど、非球面レンズ由来のものやエアリーディスクだったり、パワー配分や各収差が複雑に入り混じって発生している。それらを含めて球面レンズでのみしか表現できないNikonの考える「美しいボケとは何か」という回答が含まれているように思える。収差をある程度残しつつ、それを絞りによってコントロールするという撮影者側への余地を残し、光を紡ぎだすレンズ。

1nikkor 32mm f1.2

1nikkor 32mm f1.2

小さなボディにポートレート撮影に最適化されたかのような魅力的なレンズではあるけれど、一般的なポートレート撮影であればそれこそフルサイズの一眼に85mm F1.4クラスを使う方が良い結果が得られるのは間違いない。ここにこのレンズの放つ異彩さが出ている。

それは父親になってわかったこと。小さな子供のいる家庭では、大型なカメラを持ち歩くのは負担が大きい。また片手はほぼ荷物やら抱っこやら何かしらで埋まっていて、片手のみで操作を強いられることが非常に多い。そしてフルサイズクラスのカメラは被写界深度が極端に浅く、寄ることも難しいし、寄ったところで一瞬でピントを外されてしまう。それらの欠点を見事に解消してくれているのが、この1NIKKOR 32mm f1.2なのだと思っている。

1Nikkor 32mm f1.2
1nikkor 32mm f1.2

もちろん、欠点が無いわけではなくて、ナノクリスタルコートをうたっていても街灯を写せばプロテクトフィルターのような安っぽい緑色のゴーストが発生することもあったり、ポケットに入るサイズを逸脱してしまっていたり、輝度差があれば解放では容赦なくパープルフリンジも出る。円形絞りの恩恵もF1.6程度までで、それ以外は絞りの形が角の取れた7角形のようになる。似たようなコンセプトのオリンパス M.zuiko 45mm f1.8とコストの面でも大きな差もある。そのため、減点法でいけばコストに見合わない部分も多いため評価は低い。
が、加点法に切り替えるとグッと評価は上がる。小型化が必須とされるようなミラーレス用レンズ達の中でフレアもボケも美しくするために非球面レンズを避け、高速AFのためにSWMを搭載し、1/16000という高速シャッターがF1.2という絞りをNDフィルターなしで常用とさせる。また、F1.2という明るさは高感度に弱い1インチセンサーの欠点を補うことができる。

1nikkor 32mm f1.2

1nikkor 32mm f1.2

Nikon1 J4,J5は2Lサイズ程度であれば全く問題の無いどころか十分すぎる画質であり、家族のアルバムを彩るため、またそれ以外でも日々の出来事や目についたものをサッと写して残すことが出来るこのレンズは、家族との時間も大切にしながら日々を記録したいという人にとって最適なレンズ。

1 NIKKOR 32mm f/1.2

1 NIKKOR 32mm f/1.2
電子式ではあるものの1/16000というシャッター速度をもつNikon1 j4,J5にとって、F1.2は日中から常用可能

1nikkor 32mm f1.2

1nikkor 32mm f1.2
F1.8くらいまでは収差が残っていて、パープルフリンジやコマフレアが見て取れる。F1.2からF1.8あたりまでが収差の影響を受けてF2以降は収差がぐっと減りF4あたりでシャープな写りになる。

1nikkor 32mm f1.2

1nikkor 32mm f1.2

1nikkor 32mm f1.2
J4,J5のタッチシャッターはとても便利。片手のみでも構図を作っていけるのは抱っこで片手しか使えないときも便利。

1nikkor 32mm f1.2

1nikkor 32mm f1.2

Nikon 1 J4, 1 Nikkor 32mm f/1.2
結婚式などフォーマルな場面でもNikon1ならコンデジのように目立たない。システムを通してレンズも小型にまとまっているからだけれども、32mm f1.2はちょっと大きい。フードを付けるとかなり目立ってしまうので、この日はフードなしで。

1nikkor 32mm f1.2
絞り解放のF1.2ではやわらかく、モノクロームでもパッと見綺麗な写り。けれども1インチセンサーの限界もあり、大伸ばしには耐えられるトーンを出すのは難しい。

1nikkor 32mm f1.2

Nikon 1 J4, 1 NIKKOR 32mm f/1.2

このレンズは造りがとても良く、外装の金属加工レベルが高く美しい。サイズに見合わないずしりとくる重さも硝子がぎゅっと詰まっていてライカやツァイスのレンズような長年使いこむに値する質感を持っている。
Nikon1のJシリーズはそれこそ誰でも簡単に扱えるようになっていて、J4以降はセンサーも良くなり画質も格段に上がった。また、タッチシャッターも搭載されて誰でもこのクラスのレンズの写りを楽しめるようになった。これらの写真が撮れるカメラとレンズを合わせても手の平に収まるサイズで実現できているのは素晴らしいと思う。
個人的には子供が大きくなる前に、早くこれの14mm版(換算35mmあたり)も出して欲しいなと思う。

※掲載写真はNikon1 J4, Nikon1 J5で撮影しています。



コメントを残す

Comment

You may use these tags : <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>