SIGMA DP2 Merrill Monochrome Mode
この場所は小さいとき、親父と一緒に歩いた場所。
田舎の家から、1キロメートル以上歩いてやってくる場所だった。年に一回だけこの港で祭りがあってきていた。よく覚えている。
だけど、ここに来るまでの道が変わっていて、親父と歩いたという記憶を思い出させるためのキーワードが奪われていた。そう、記憶を思い出すためのキーワードは自分の知らないところでどんどん奪われていく。
この港も、海もどんどん変わっていくのかもしれない。自分が年を重ねると変わってしまった現実の光景と記憶の中の光景が一致しなくて、さらにキーワードが奪われていって、親父との思いでさえもあいまいになって、やがて消えていくのかもしれない。
シャッターを切っているのは楽しいだけじゃなくて、そういうコトへの怖さとか恐れとか、そういうこともゼロじゃなかったりする。写真を撮るっていう行為は、切った瞬間のことを鮮明に思い出せたりもするくらい、記憶に焼き付けて現実の形にも残っていく。
圧倒的な力で奪いにかかってくる時間という奴らへの布石。